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■ ひとつひとつのライブを大切に。
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2010年07月21日(水)
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ライブになかなか人が来てくれないということは、すでに何度も書いてきている。そしてライブに人が来てくれるようにするのは、まったく簡単なことじゃなく、手っ取り早い方法など何もないということもよくわかっている。
自分の場合を考えてみよう。歌を歌っているこのぼくにしても、よっぽどのことがないかぎり、あるいはとても強い興味を覚えないかぎり、ひとのライブにはなかなか出かけて行かない。 夕方、たとえば一日の仕事を終え、それから電車やバスに乗って遠くのライブ会場に出かけ、始まるまでひたすら待ったり、お目当てのミュージシャンが登場してくるまで、あまり感心しない共演者のステージを見たりして、結果的に何時間も費やし、へとへとになって夜遅くに家に帰る。 ライブに行くのには、強烈な欲求とはかりしれないエネルギーが必要なのだ。もちろんライブ・チャージやドリンク代、あるいは食事代など、お金だって相当な出費となる。 だから何でもかんでもライブに行くわけにはいかない。どうしても聞きたいと思わなければ、なかなか腰が上がらない。行くライブを厳選してしまう。そして意を決して行ったライブがつまらなかったり、期待に応えてくれないものだったりすると、「ああ、こんなんじゃ来なけりゃよかった」と思い、ライブ離れが進んで行く。 満員の中じっと立ち続けていなければならなかったり、あるいは会場に煙草の煙がもうもうと立ちこめていたりしたら、ライブはもう懲り懲りという気持にもなってしまう。 それでも、素敵なライブに行けば、そんなもろもろのことなどはもうどうでもよくなってしまう。それ以上の大きなものを受け取ることができる。来てよかったと心から思い、億劫がったり面倒くさがったりして来なかった人には、「ほんとうにもったいないことをしましたね、お気の毒」と言いたくなる。 自分のライブがそんなライブに少しでも近づけるよう、ひとつひとつのライブを、心を込めて大切にやっていきたいと思う。
7月15日から関西に歌いに来ている。17日は京都で、18日は兵庫県の舞子でライブをやった。 京都は元田中にあるキッチン・ハリーナで西尾汀子さんとのジョイント・ライブ。舞子はこずみっくでのライブで、このお店には毎年7月に歌いに来させてもらっている。 こずみっくでのライブを主催してくれるのは、まっちゃんことS松本さんで、彼はいろんな歌い手を呼んで、「まっちゃんライブ」を、ほぼ毎月のように行っている。その回数は優に100回を超えていて、今回のぼくのライブは何と130回目のまっちゃんライブになる。そして今回のこずみっくでのライブは、丸岡マルコ淳二さんとの共演だった。
そもそも毎年7月にこずみっくで歌わせてもらうのは、吹田にあるマクロビオティック・カフェのPINOが毎年海の日にふちがみとふなととぼくとのジョイント・ライブをやってくれ、それで大阪まで来るからと、まっちゃんに声をかけ、PINOの前後にこずみっくでもライブをやることが恒例になったのだ。 そして今年は大阪や舞子まで来るのだからと、そこに京都でのライブもくっつけ、キッチン・ハリーナでやれることになった。
17日のキッチン・ハリーナでのライブは、西尾汀子さんがいろんな人に一生懸命声をかけてくださり、西尾さんの知り合いを中心に20人近い人が集まってくださった。キッチン・ハリーナはそれほど大きなお店ではないので、それだけ人が入ると、もう超満員という感じだ。 西尾汀子さんの知り合いが中心ということは、汀子さんの歌は聞いたことがあっても、ぼくの歌を聞くのは初めてという方も多いはず。ライブは一期一会だとぼくは考えていて、初めて聞いてくださる人の前でベストの演奏をしなければ、「何だこんなものか」、「全然面白くない」と、二度とライブには足を運んでもらえなくなる。 今さらだが、一期一会とは茶の湯で、茶会は毎回、一生に一度だという思いをこめて、主客とも誠心誠意、真剣に行うべきことを説いた語だ。桃山時代の茶人、山上宗二(やまのうえそうじ)の『山上宗二記』の中の「一期に一度の会」という言葉がもとになっている。
もちろんどんな歌が好きか、どんな音楽が好きか、どんな歌い手が好きかというのは人それぞれで、ぼくが歌っているような歌をまったく受け入れられない人がいることもよくわかっている。ぼくだって万人受けする歌を目ざしているわけではない。 きれいな歌を、上手な歌を、楽しい歌だけを求めている人にしてみれば、ぼくの歌など用なしだろう。どんな歌をいいと思うのかは人それぞれだから、その人の好みや価値観と相容れなかったりするのは、どうしようもないことだ。 でもぼくの歌を全然知らずにライブに来てくれて、初めて聞いて、「いいな、また来よう」と思う人が一人でもいてくれたとしたら、歌う者にとってこんなに嬉しいことはない。そしてそこからライブに来る人の数がきっと増えて行く。 動員を増やすためにいろいろと戦略を考えたり、手当り次第に声をかけるよりも、最も地道に思えるこのことこそが、ライブに来てくれる人を増やすための「正道」なのだとぼくは考えている。 キッチン・ハリーナでのライブはとても楽しく、大いに盛り上がった。またぼくのライブに来てくれる人がきっといると、ぼくは信じたい。
こずみっくでのまっちゃんライブにも、10人ほどのお客さんが聞きに来てくれた。こちらは毎年同じ人がライブに来てくれる。これはとても嬉しく、ありがたい。これからもずっと来てもらえるようにと、ぼくは毎回精一杯歌う。それに去年と同じことをしてはいけない、去年と違う新しい歌を聞いてもらいたいとも強く思う。 初めて聞いてもらう人たちの前でベストの演奏をしたいと思うのと同じように、いつも聞いてくれる人たちの前でもベストの演奏をしたいと思う。また違った意気込みや緊張感を抱くことになる。要は、どんなライブであれ、すべてのライブでベストの演奏をしたいということだ。あたりまえといえば、あまりにもあたりまえの話なのだが…。
今年のこずみっくもとても楽しい夜になった。いつも来てくれる人に初めて聞いてもらう歌も何曲か歌えた。後半は丸岡マルコ淳二さんと一緒に何曲も演奏できた。こずみっくのゴンさんと愛ちゃんにも喜んでもらえたと思う。お二人からは「また来年も来てや」という嬉しい言葉をもらった。
ライブが終わって、まっちゃんを中心にまっちゃんライブの常連の人たちと一緒に、垂水にあるレトロな雰囲気の民家居酒屋ウタマロセヴンに飲みに行った。 「いつもフォークがかかっているお店やで」と、まっちゃんが教えてくれる。まっちゃんのボトルもキープされている。 確かにお店にはフォークが流れていたが、フォークはフォークでもニュー・ミュージックと呼ばれるようなお洒落できれいな歌ばかり。まっちゃんがお店の人に「もっとマイナーなフォークは聞かれへんのん?」と尋ねると、しばらくしていきなりぼくの「主婦のブルース」がかかってびっくり。 「この歌歌ってるのんこの人やで」と、まっちゃんがお店の若い人に告げる。もちろん当時のフォークなどまったく知らない世代だろう。 そういえばこの日の朝、ぼくは泊めてもらった京都のキッチン・ハリーナの二階で、「主婦のブルース」のニュー・バージョン、「主婦のブルース2010」を完成させたばかりだった。もちろん来年のまっちゃんライブでは、それをぜひ聞いてもらおう。 でもその前にこの夏のツアーから、「主婦のブルース2010」をどのライブでも歌って、自分の中にどんどん入れて行くようにしよう。
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