GORO NAKAGAWA FOLK SINGER 

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GORO NAKAGAWA
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NAOBUMI OKAMOTO


Dig Music Gazette 13

自分の感受性くらい

 

 茨木のり子さんの詩「自分の感受性くらい」をぼくが初めて読んだのは、1970年代後半のことだった。ものすごい衝撃を受けた。
 まさに自分のことを言われていると思った。ちょっと曲がり気味になっている自分の背中を思いきりバーンと叩かれたみたいだった。
 もちろん詩として完璧で、曲をつけて歌にする必要などなかったのだが、ぼくはこの強く厳しい言葉に素朴なメロディをつけて歌にして、それをみんなに聞いてほしいと思った。
 それから25年以上が経ち、2004年に『ぼくが死んでこの世を去る日』というアルバムをぼくが作った時、この曲をどうしても入れたいと思った。それで初めて茨木さんにぼくが曲をつけた「自分の感受性くらい」を聞いていただき、アルバムに入れてもいいと言ってもらえた。とても嬉しかった。
 それからもぼくは自分のライブで「自分の感受性くらい」をよく歌っている。そして2011年3月11日以降は、ほかのいくつかの歌と同じように、また違う思いを重ねて歌うようになった。歌っていると、あれだけのとんでもないことが起こり、自分たちの住んでいる国がこんなにもひどいことになっても、いまだに何でも何かのせいにしてしまおうとする人があまりにも多いことに対して、悲しみや嘆き、憤りが込み上げて来る。そして何よりも強く抱くのは、ついそこに逃げ込んでしまおうとする自分自身への戒めの気持ちだ。
 2006年2月にこの世を去った茨木のり子さんは、今の日本を前にしたら、いったいどんな詩を書かれるのだろうか。
 
中川五郎

Dig Music Gazette 12

豊かな恵みの使い道

 

 「What You Do with What You’ve Got」をぼくはエディ・リーダーの歌で初めて聞いた。
 フェアグラウンド・アトラクションのシンガーとして大活躍したスコットランドのエディが、そのバンドを解散した後、1992年に発表したソロ・デビュー・アルバム『Eddi Reader』で、この曲を取り上げて歌っていたのだ。
 エディの歌う「What You Do with What You’ve Got」にぼくは完全に心を奪われ、それから作者のアメリカのフォーク・シンガー、サイ・カーン(Si Kahn)のオリジナルやそれを忠実にカバーしたスコットランドのフォーク・シンガー、ディック・ゴーハン(Dick Gaughan)のバージョンにも耳を傾けた。
 しかしオリジナルはかなりシンプルなもので、短調から長調へとドラマチックに展開する、原曲とはほとんど別の曲と言ってもいいエディのバージョンのほうがぼくは断然気に入っている。
 この曲のタイトル「What You Do with What You’ve Got」を直訳すれば、「自分が持っているもので何をするのか」となる。
 そしてこの曲は、立派なからだや賢い頭、地位や名誉や財産を持っていても、持っているだけではまったく意味がなく、それをどう使うのか、どう役立てるのかが大切だと訴えている。
 歌詞の後半では、隣人と協力し合う人と棍棒を振り回す人、権力の座に居続ける人と虐げられっぱなしの人、栄光に向かって走る人と足があっても走ろうとしない人と、対極の世界に生きる人たちのことが並べて歌われ、どちらが太陽に手を差し伸べる人で、どちらが「cripple」なのかと問いかけて終わっている。
 ぼくがこの曲を日本語にして歌いたいと思ったきっかけは、山口県上関町田ノ浦に原発を作ろうとしている中国電力が、それに反対する人たちを工事を妨害していると損害賠償の訴訟を起こしたり、山口地裁が工事を妨害する住民に対して一日500万円を支払うべしという判決を下したことを知ったからだ。
 電力会社のトップの人間にしても、裁判官にしても、子どもの頃から頭がいいと褒めそやされ、神童と呼ばれ、エリート・コースを突き進んだ人が多いはずだ。
 そんな豊かな恵みを授かった「立派」な人たちが、ひとたび出世し、金や権力を手に入れると、何が何でも自分たちに反対する弱い者、小さな者を、徹底的に痛めつけようとしている。
 そしてその時に実戦部隊として駆り出されるのは、やはり子どもの頃から、腕力がある、逞しいと持ち上げられていた「立派」な人たちだ。
 これはもちろん上関に限ったことではない。
 日本のいたるところで同じことが起こっているし、とりわけ沖縄では顕著なことだと言える。
 トップに昇りつめた者や、そのもとで動く者など、いくら豊かな恵みを授かっていても、その使い道を誤り、虐げられた人たち、差別される人たちの痛みや苦しみをまったくわかろうとしない「cripple」な心の持ち主が、どうすれば目を覚ましてくれるのか、そんなことを考えながら、ぼくはこの歌「豊かな恵みの使い道」を歌い続けている。
 
中川五郎

Dig Music Gazetteとは

中川五郎と岡本尚文がコラボレーションして歌と映像を届けるシリーズの名称。
DigはDigitalとDig itのダブル・ミーニング、Gazetteは新聞。

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